事業承継を考える(静岡事務所 長坂)

 

お客様のところでこの話題、何度もしています。

おかげさまで長く関与させていただいているお客様が多いので、

世代交代にさしかかっている会社様がたくさんあるからです。

 

こちらから今後の事業承継のことどうお考えですか?と話題を出すと、

家族の中で誰が継ぐ、という話がちゃんとできている会社は

かなり少ないことに気が付きます。

 

静岡事務所で、すでに私が引き継いでから廃業してしまった会社が何件かあります。

廃業することにした、と聞いて慌てて訪問し、

社長に「人材バンクとかありますよ」、「M&Aという手もあります」、

「ここでその技術を後世に引き継がないのはもったいないです」などお伝えしても、

すでに誰かに引き継ぐという気力がなくなっている、

面倒になっている、というのを目の当たりにしました。

 

社長を辞めたくなってから考えるでは遅いのだなと思い、

まだ若いうちから考えていないとうまくいかない、と思いました。

 

それで、まだ後継者が誰かはっきりしていない先については

ほぼ全顧問先について

1年に1回の決算報告ごとにちょっとずつこの話をしていくことにしました。

 

数年、回を重ねてやっと社長の考えがまとまってきた、

息子さんの意思がはっきりしてきた、

決算報告に同席してくださるようになった、

というゆっくりな感じの会社がたくさんあります。

 

株価が高くて将来の贈与税相続税を心配している方には

毎年少しずつ贈与税の非課税枠を使って株を贈与していくという,

最も有効な対策があり、

そのためには早く決断をした方がよいのですが、

広い視点で見るとそれを焦ることは必ずしも正解ではなく、

大事なのは会社をこの人に引き継がせよう、という勇気ある決断と、

引き継ぐ人の意思の確認や、覚悟ができるのを辛抱強く待つこと、

なのではないかと思います。

 

現社長はその間に事業のこれからのビジョンをますます磨いていき、

継ぐ人が安心して挑戦できる会社にしておくこと

焦らずに信頼関係を作っていくことが結果的に近道なのではないかと思います。

 

株価が高くはない会社の場合であっても、

借金が多い会社であれば、やはり引き継ぐには大きな勇気が必要です。

自分の事業に自信が持てず、現経営者が後継者に遠慮をしたり、

親族同士の承継だと、お互いのやり方にこだわり、素直になれなかったり、

引退後の生活を不安に思ったり、

いつまでも先代に甘えてしまったり

時には想像力がありすぎてプレッシャーに耐えられなくなったりします。

 

私は他人だからできることがあるのかも、としばしば感じます。

親子が口を利かない、夫婦の考えがちがう、そんなお客様がいらっしゃいます。

私を同席させることで冷静に自分の考えを発言できるのだな、

と思うシーンもあります。

本当はそれぞれに事業のことを真剣に考えていることを知っていますから

そんな経営者家族の皆さんに寄り添ってそれぞれの気持ちを聞いてみたり、

優遇税制、金融機関の情報、他社事例(もちろん匿名)、M&Aの情報など、

参考になることが一つでもあればと話題を提供したりして

事業承継が少しでも前に進むためのお手伝いをしています。

 

実は静岡事務所の顧問先様には100年以上続く会社様があります。

静岡事務所自身もおかげさまで先々代から90年以上続いています。

 

「長く続く会社が多い国はいい国だと思う」、という大同生命のCMを聞くと、

確かに、とっても難しいことをやってきた国なんだなと先人たちに尊敬の念を抱き、

CMの短い時間内でも感慨深い気持ちになります。

 

私たちも、いい国づくりのために微力ながら貢献していきたい!

静岡事務所も将来きちんと引き継ぐことを考えて行きます。